胡蝶蘭は個人での観賞用のほか、開業・開店祝いや誕生会をはじめとしたお祝いごとの贈り物としても幅広く使われる、人気の高いお花です。胡蝶蘭の人気の理由は、その豪華で気品のある見栄えとともに、「幸福が飛んでくる」「あなたを愛しています」「不可能なことを成し遂げる」といった縁起の良い花言葉にもあります。また、実は手入れが簡単で寿命が長いことも理由の1つです。
ここでは、そんな胡蝶蘭をより深く楽しむために、意外と知られていない胡蝶蘭の寿命や、より長生きさせるための育て方、植え替え方法や二度咲きのコツなどについてご紹介します。
まずは胡蝶蘭の寿命と、長生きさせるために必要な環境、水やりの方法などを見ていきましょう。
胡蝶蘭の花は、実は1ヶ月以上にわたって楽しむことができます。ひと鉢で複数のお花を付けるため、それぞれの開花時期がずれることを考慮すると、最後の花が散るまで3ヶ月ほど楽しめる場合もあります。また胡蝶蘭は、花が散ったり落ちたりしても枯れてしまうわけではありません。根腐れしたり病気にかかったりしない限り、何度でも花を咲かせることができ、その寿命は50年以上とも言われています。
胡蝶蘭を育てるのに適した置き場所や環境を作るには、以下の要素を供えることが必要です。
胡蝶蘭はもともと、台湾・フィリピン・マレーシアなど亜熱帯から熱帯にかけての熱帯雨林に自生する植物。日本の生産地では主にビニールハウスで栽培されています。大きな樹や岩などに根を張り、地中ではなく空気中から水分を補給して補給をしているため、ラン鉢の中には通気性と保湿性を確保する目的でバークチップや水苔を入れます。冬場など湿度が50%を下回り、空気が乾燥しているときは、霧吹きで葉に水を掛けて保湿をする(葉水)ようにしましょう。
また原生地は直射日光が当たる環境ではないので、日当たりが強すぎる環境はNG。レースのような、光を通しつつ適度な遮光ができる薄手のカーテンか遮光ネット越しに、柔らかい光が当たるのが理想です。暑さに比較的強く寒さには弱いですが、エアコンの風が直接当たる環境も避けましょう。置き場所には、明るい部屋の直射日光が当たらない場所が適しています。特に、暖かく適度な湿度のあるキッチンカウンターや、テレビ台の周りがおすすめです。加えて、鉢をむやみに移動させずにストレスを与えないことも重要です。
とはいっても、あまり難しく考える必要はありません、基本的には人間が快適と感じる環境を胡蝶蘭も喜びます。
胡蝶蘭の水やりの頻度やタイミングは、以下を参考にしてください。
春・秋 | 頻度:1週間~10日に1回程度 水量:1回あたり200mlほど |
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夏 | 頻度:2~3日に1回程度 水量:1回あたり500mlほど |
冬 | 頻度:1ヶ月に1回程度 水量:1回あたり200mlほど |
胡蝶蘭が枯れる原因の多くは、水のやり過ぎによる根腐れと直射日光による葉やけです。この2つにさえ注意すれば、枯れる心配はほぼありません。熱帯雨林が原産とはいえ、胡蝶蘭は基本的に空気中から得ることのできる少ない水で生きている植物です。鉢植えへの水やりは、バークチップや水苔の表面が乾いて水気がなくなってから行いましょう。まだ湿っているときに多量の水をやってしまうと、根から呼吸することができずに根腐れの原因になってしまいます。
水が乾燥する速度は季節によって異なるため、季節ごとに様子を見ながら水やりの頻度を変えることをおすすめします。乾燥している時期は、葉の表と裏に霧吹きで葉水を与えて水分を補いましょう。気温が低くなるごとに水を吸い上げにくくなるため、なるべく午前中に水を与え、その後はしっかりと日に当てるようにしてください。
また、胡蝶蘭の鉢には複数の株が寄せ植え状態になっていることが多いです。水やりの際はすべての株にまんべんなく水が行き届くように注意してください。鉢の受け皿には余った水が溜まることがありますが、これはカビや雑菌の原因になるのでこまめに捨てましょう。
そのほか、胡蝶蘭のお手入れについて季節ごとに注意したい点をご紹介します。
春 | 4月:植え替えを行う(2年に1回程度) |
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夏 | 6月:液体肥料(栄養剤)を与える(週に1回程度) 梅雨入り後:過度な湿気(※)を避ける 梅雨明け後:乾燥と冷房の直風に注意 ※温度の高い所に置き続けていると「軟腐」という病気の原因になります。 |
秋 | 彼岸明け:日照や乾燥など、夏との気候の変化が激しくなるので鉢の様子に注意する(※) ※気温の低下に伴い空気は乾燥しやすくなりますが、温度も低くなるため株が湿っている状態も長くなります。 |
冬 | 冬期:水やりは水温20~35度程度のぬるま湯で行う(※) ※水温が低すぎると胡蝶蘭の株に負担がかかります。 |
胡蝶蘭は長生きするお花だとはいえ、やはり季節が変わるごとにその変化によって負担がかかります。状態の変化に注意し、植え替えや肥料などのサポートが必要なタイミングを見逃さないようにすることが必要です。
既に書いたとおり、胡蝶蘭の寿命を延ばすために、花が咲き終わったら植え替えを行いましょう。
胡蝶蘭を長く育てるほど、植え込みに使われているバークチップや水苔などの資材は古くなり、カビや雑菌が繁殖しやすい環境になっていきます。胡蝶蘭を健康に保ち、美しいお花をたくさん咲かせるには、鉢の植え替えが必要です。
植え替えの時期は4月が最適です。遅くとも6月までには行うことをおすすめします。
病気などで植え替えがすぐに必要な場合はその限りではありませんが、株に負担のかかる夏や冬はできるだけ避けた方が無難です。花が咲いている場合は、咲き終わってから植え替えてください。
また、植え替えを頻繁に行うと根を傷めてしまうため、2年に1回程度にしましょう。
胡蝶蘭の植え替えには、以下の物を用意してください。
用土には、水苔やバークチップがよく使用されています。そもそもバークチップとは、アカマツやクロマツなどの樹皮を砕いたもので、ウッドチップより面積が大きいため少ない量で広く敷くことができます。もともと水苔で栽培されていた胡蝶蘭を、バークに植え替えても問題ありません。
続いて鉢ですが、バークチップの場合はポリポット鉢、水苔の場合は素焼き鉢が適しています。鉢の大きさは小さめが良いでしょう。胡蝶蘭の大きさに合わせて4号鉢から5号鉢を選んでください。寄せ植えの場合は、1株ずつ別々の鉢に分けましょう。株数の分だけ鉢が必要です。
その他、肥料やハサミも用意してください。なお、病気が伝染しないようにハサミや作業する手は消毒し、鉢は新しいものを使うことをおすすめします。
準備が整ったらいよいよ胡蝶蘭の植え替えです。まず花芽をハサミで切り、除きます。続いて根を傷めないように、古い用土、傷んだ根、黄色くなった葉を取り除いてください。
用土が水苔の場合は、水で湿らせた水苔を根の回りに巻き付けます。そして鉢の中に入れたら、15日から20日程は水を与えないでください。その後、10日に1回程度、コップ1杯の水を与えます。
用土がバークチップの場合は、まずチップをひと掴み鉢の中に入れます。続いて、固形肥料を入れ、その上にまたチップをひと掴み入れて、肥料が根に直接接触しないようにしてください。胡蝶蘭の株を鉢の中心部に入れた後、周りにもチップを敷き詰めます。植え替え後7日間程度は、水を与えないようにしましょう。その後は7日に1回程度、コップ1杯の水を与えます。
胡蝶蘭は花を咲かせるために「花芽」というものを発芽させます。この花芽が成長し、大輪系の品種では70cmほど、小・中輪系では10~20cmほどまで成長すると、「花茎」と呼ばれる状態になって開花へ至ります。
花茎にはよく見ると節がついています。咲いていた胡蝶蘭のお花が終わったら、根元から3つほど節を残して花茎をカットしましょう。その下から脇芽(わきめ)が伸びてきて、二度咲きを目指すことができます。
脇芽を出すためには室温18~24度程度を維持し、花が終わって消耗している株に栄養を送って再度元気にさせなければなりません。株がもっとも活性化するのは30度近い気温とも言われているので、通常のご家庭の室内で行う場合には、初夏に終わった株を夏場に休ませ、秋から翌春かけて2度目の開花を目指す流れが良いでしょう。
節のカットが終わったら、前章でご説明した鉢の植え替えを行います。その後は前述した置き場所や水やりの頻度、注意点などを守ってしっかりと管理していきましょう。二度咲きには株の負担を軽減しストレスを与えないことが大切なので、出てきた花芽が枝分かれした場合は、元気な方を残して間引きしてください。
長く育てたあとに胡蝶蘭が枯れてしまった場合は、処分をしなければなりません。胡蝶蘭の鉢には、ポリ製か陶器製の鉢、株(茎と根)、株の入ったビニールポット、茎に添えられたワイヤーなどのパーツがあります。鉢とビニールポット、ワイヤーは不燃ゴミに、株は可燃ゴミに分別したうえで、お住まいの自治体の指示に従ってゴミ出ししてください。
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ここまで、胡蝶蘭を長く楽しむために必要なお手入れ方法や植え替えについてご紹介してきました。ぜひ適切な育て方を心掛けたうえで、胡蝶蘭の美しさを長く楽しんでください。